再生材(リサイクル材)の活用は、SDGsやサーキュラーエコノミーの実現に向けた現代のものづくりにおいて、企業の社会的責任を果たす上で非常に重要な取り組みです。コスト削減だけでなく、企業の環境姿勢をアピールする競争力にも繋がります。
実際に近年では、成形に再生材を使用する射出成形金型の依頼も増えてまいりました。
ただし、再生材での射出成形成形・量産を成功させるためには、バージン材(新品の材料)を前提とした従来の成形とは異なる、再生材特有の性質とそれに伴うリスクを深く理解し、事前に対策を講じることが不可欠です。
再生材の射出成形において重要なポイントは「①バージン材との根本的な特性の違い」と、それによって引き起こされる「②成形における課題と金型設計による対策」の2つです。
再生材は「一度市場で使用された製品」や「製造工程で発生した端材」などを原料とするため、品質がバージン材ほど均一ではありません。この「不均一性」が、様々な問題の根源となります。
ガスの発生量が格段に多い バージン材に比べ、再生材は成形時のガス発生量が格段に多くなる傾向があります。これは、リサイクル原料に含まれる微量の印刷インク、接着剤、異種樹脂の混入や、材料自身が過去に受けた熱履歴(熱劣化)によってポリマーの分子構造が破壊され、ガス化しやすくなっているためです。このガスが、成形品質を著しく低下させる要因となります。
再生材は、その時々でリサイクルの元となる母材が異なるため、生産されるロットごとに物性が変動することがあります。例えば、流動性(溶けた樹脂のサラサラ具合)や成形収縮率が微妙に変わるのです。この物性の「ブレ」を考慮せずに成形を続けると、製品の寸法が安定せず、品質のばらつきに直結してしまいます。
上記の材料特性は、成形現場において以下のような具体的な課題となって現れます。そして、これらの課題の多くは、成形条件の調整だけで解決するのは難しく、根本的な対策として金型設計の最適化が求められます。
金型内で逃げ場を失ったガスは、高温高圧で圧縮され、製品を部分的に焦がす「ガス焼け」を引き起こします。また、ガスに含まれる成分が金型の精密な表面を侵し、サビや腐食を発生させる「ガス腐食」も深刻な問題です。腐食が始まると、製品の光沢が失われたり、離型性が悪化したりと、金型の寿命を著しく縮めてしまいます。
【解決策】
ガスベントの最適化:ガスの逃げ道となる「ガスベント」を、ガスの溜まりやすい箇所に、適切なサイズと数だけ緻密に設計・配置します。
ガス抜き構造の設置:通常のベントではガス抜きが足りない場合、入れ子を分割したり、パーティングラインを意図的に追加したりして、ガスが抜ける経路を積極的に設けます。
金型表面の保護:耐腐食性に優れた特殊な表面処理(メッキ)をキャビティ表面に施すことで、ガスによる化学的な攻撃から金型を守り、メンテナンス負荷を軽減します。
あるロットでは狙い通りの寸法で成形できていたのに、次のロットに切り替えた途端、製品が大きくなったり小さくなったりする「寸法ばらつき」が発生します。これは、ロットごとに収縮率が異なるためです。この問題は、組み立てが必要な部品において嵌合不良などを引き起こし、歩留まりの悪化や検査コストの増大に直結します。
【解決策】
インロー調整機構の設置:製品の嵌合部など、特に寸法精度が要求される箇所に、シムプレートや調整ネジによって0.01mm単位での微調整が可能な機構をあらかじめ金型に組み込みます。これにより、成形機側で条件を追い込むのではなく、金型側で物理的に寸法をアジャストでき、安定した生産が可能になります。
再生材の射出成形は、単に材料を置き換えるだけではうまくいきません。その特性を深く理解し、発生しうる問題を予測して、それらを未然に防ぐ機能を盛り込んだ「再生材で成形することを踏まえた金型」を準備することが、結果的に最も生産性と品質を安定させ、トータルコストを下げることに繋がります。
当社は、こうした再生材ならではの課題解決に特化した金型設計・製作の実績がございます。再生材を使用した射出成形をご検討の方はぜひ一度ご相談ください!
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