プラスチック金型の錆・腐食の修理方法とは

「防錆剤を塗って保管していたのに、結露のせいで金型が錆が出てしまった」「樹脂ガスによる腐食(ガス腐食)のせいでキャビティ面にピンホールが発生し、成形品に突起や離型擦れが出る」
——射出成形の生産現場を預かる設計者や保全担当者から、弊社にはこうした相談が数多く寄せられます。
本コラムでは、年間100型以上、燕三条の自社工場から累計5,000型を超えるプラスチック成形金型の設計・製作・メンテナンスを手がけてきた「プラスチック金型メンテセンター.COM(三愛テクノロジー)」が、単なる錆落とし液では解決できない「金型の錆・腐食」に対する根本的な修理・対策方法を技術者目線で解説します。
1. プラスチック成形金型における「錆・腐食」とは
腐食とは、金属などが水分やガスと反応して錆へと変化していく「酸化反応現象(プロセス)」そのものを指します。錆(サビ)とは、その腐食作用によって金属表面が変質し、目に見える形で生じた「物質」のことです。
プラスチック成形の現場では、稼働や納期を優先するあまり、錆への根本修理を後回しにしてしまうケースがあります。
しかし弊社では、錆や腐食が発生した段階でどこまで適切な「根本修理」を行うかが、その後の量産品質を根本から左右するものであると考えています。錆取りは単なる清掃対応ではなく、将来の安定量産を見据えた重要な保全工程です。
2. 金型の錆の落とし方
錆の進行度によって、取るべき対応は異なります。そして、この違いを正確に把握しておくことが、手遅れになる前の適切なメンテナンス判断につながります。
錆修理の基本は、専門的な技術によるミガキ直しです。
シボ面に関しても、錆の程度によっては、ミガキ直しの後シボ加工で対応できる場合とシボのかけ直しで対応できる場合があります。
一方、ミガキ直しだけでは形状の歪みを直せない、あるいは凹み自体が深く寸法が復元できない場合は、溶接によって肉盛りを行ったうえで、機械加工や手仕上げによって形状を復元します。
つまり、修理の流れは「まずミガキ直しで対応できるかを見極め、対応できない場合に溶接などの必要な加工へ進む」という順序になります。
特に、PXA30やNAK55、SKD61等の焼入れ材でできた、公差が厳しい日用品・医療機器・自動車用部品などのプラスチック金型は、試作・量産を問わず高度な技術による見極めと修理が必要です。
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3. 金型の錆・腐食の原因と製品への影響
弊社がこれまで対応してきた実績の中で、金型の錆・腐食を引き起こす原因は、大きく「金型管理的な要因」と「成形材料による要因」の2つに分けられます。
原因①:温度差と湿度による「結露(水分)」
夏季の高温多湿な工場環境下や、冷却水を急激に循環させて金型を急冷する際、金型表面と外気との間に大きな温度差が生じます。これにより、金型表面に目に見えない微細な結露が発生します。この水分や、成形終了時の水抜き(除去)を忘れた冷却水の残留が、鋼材の鉄成分と反応して赤錆を引き起こす原因になります。
また、夏場に素手で製品部に触れることも、塩分や水分の付着から錆を呼ぶ一因になることもあります。
原因②:溶融樹脂から発生する揮発成分による「ガス腐食」
ガス腐食は、通常の樹脂を使用した成形でも発生します。加えて、コスト削減や環境対応のために導入が増えている再生材(リサイクルプラスチック)を使用すると、ガスヤニなどの汚れがより多く発生する傾向があります。溶融樹脂から発生した揮発ガスが型内に付着すると、茶色い「ガスヤニ」として製品面に蓄積するだけでなく、金属表面を化学的に削り落としていく「ガス腐食」を引き起こします。
なお、ガス腐食が進行した金型で成形を続けると、成形品の色が変化することがあります。
これも金型に腐食が生じているサインの一つです。
4. 錆取りの修理方法
製品部(キャビティ・コア面)の場合
製品部にサビやガス腐食による凹み・ピンホールが生じた場合は、ミガキ直しで対応します。
ミガキ直しは、単に表面の汚れを取り除く作業ではなく、製品部のエッジ形状や意匠面(シボ面)のディテールを保ったまま、寸法公差内に収める精密な作業です。
特にシボ面は微細な凹凸で意匠を表現しているため、面の状態を正確に見極めながら仕上げる技術が求められます。
PL面・合わせ面の場合
PL(パーティングライン)面や入れ子の合わせ面は、製品部とは異なり「磨く」対象ではなく「すり合わせ」によって精度を保つ箇所です。この面が減り、隙間ができているようであれば、減ってしまった部分を肉盛りしてから、元の面形状に仕上げ直すことも必要です。製品部のミガキ直しとは異なる工程であるため、発生箇所に応じて適切な方法を切り分けて対応することが重要です。
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5. 三愛テクノロジーが実現する、錆修理のポイント
錆・腐食トラブルを根本解決するには、症状に応じた正確な見極めと、高精度な精密肉盛り溶接による形状復元、そして再発を防ぐための水管防錆清掃・表面処理などを組み合わせて対応することが効果的です。
弊社が他社製・海外製(中国・アメリカ製など)・廃業メーカーの図面のない金型の錆修理をお引き受けする際に行っている、3つの技術的なアプローチをご紹介します。
① レーザー溶接・マイクロTIG溶接による精密肉盛り補正
錆やガス腐食で凹んでしまった製品面・ピンホール、あるいは痩せてしまったPL面に対し、弊社ではテラスレーザー社製のYAGレーザー溶接機「YW-150」や、熱変形・ヒケを極限まで抑える「マイクロTIG溶接(型内低温溶接)」を駆使してピンポイントで肉盛り補修を行います。マイクロTIG溶接では通常の2mm溶接棒だけでなく、0.1mm〜2mmの極細ワイヤーも使用するため、熱影響を最小限に抑えながら、焼入れ材(SKD61等)やアルミ・銅合金への精密肉盛りに対応できます。
また、シボ加工や鏡面仕上げが必要な箇所は、溶接によって硬化層が生じるため、溶接箇所に予熱等の処理を行ったうえで加工します。
>>よくある質問:SKD61等の焼入れ材でできた射出成形金型の肉盛り補正は可能ですか?はこちら
② ウォーターリーマーを用いた「水管防錆清掃」による冷却効率の改善
錆は金型表面だけでなく、見えない「冷却水管(温調穴)の内部」でも確実に進行しています。水管内に錆や不純物が堆積してスケールになると、冷却水の通り道が狭まり冷却効率が著しく悪化します。冷却効果が落ちると金型温度が上昇し、成形ショットサイクルが延びるだけでなく、製品の反り・変形、さらには金型全体の熱籠もりによる膨張が摺動部のかじり・ロックを招き、ライン停止につながることがあります。
弊社では専用のウォーターリーマー(金型温調配管用除錆機)を使用することで、金型を全分解せずに内部の頑固な錆・不純物を強力に溶解・除去します。不純物除去と同時に専用洗浄液により水管内部へ「防錆被膜」を形成するため、次回稼働時からの防錆持続性も大幅に向上します。
>>よくある質問:ウォーターリーマーで温調穴の水管清掃は出来ますか?
③ 耐食性や離型性を向上させる表面処理の技術提案
錆を落として形状を復元した後は、再発を防ぐ表面仕上げが重要です。成形する樹脂の特性や使用環境に応じ、ステンレス鋼への鋼材変更、硬質クロムメッキ(湿式)やPVDコーティング(乾式)による保護膜の選定、あるいは先進の表面改質「イエプコ処理」など、耐食性や離型性を高める提案を行っています。
スイスIEPCO社の技術である「イエプコ処理」は、20μm程度の微細な処理剤を2工程に分けて圧縮吹き付けする特殊マイクロブラスト処理です。1工程目の「クリーニング工程」で放電白層や加工変質層・微細なバリを除去し、2工程目の「ピーニング工程」で表面の微細な孔(マイクロポーロシティ)を閉塞・平滑化します。離型性が大幅に向上してガスヤニの固着そのものを防げるうえ、一般的なコーティングのように「修理・メンテのたびに被膜を剥離する手間がかからない」という、量産現場にとって合理的なメリットをもたらします。現在はメーカー様への依頼対応を行っていますが、ご要望が多いため今後の自社設備導入も予定しています。
>>よくある質問:イエプコ処理を行うとどのような効果がありますか?
なお、修理後は再発防止のため、防錆剤の塗布と適切な保管も重要です。
金型の稼働終了後、常温に戻った段階で防錆剤を塗布し、湿度が低く換気の良い場所で保管してください。特に季節商品など長期間停止する金型は、丁寧かつ厚めに重ね塗りを行うことがポイントです。ランナーやスプールの穴は塗布を忘れがちなため、注意が必要です。また、日頃からこまめに金型表面を清掃してガスヤニを除去することも、ガス腐食の予防につながります。
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6. 金型のサビ・腐食修理事例
事例①: 大型自動車用バッテリー金型の水没修理
大型自動車部品のバッテリー電槽用の射出成形金型(材質:PXA30)で、水没による修理を行った事例です。金型を分解して内部の泥を除去したうえで、サビが生じたイジェクタピン・Oリング・バネなどの部品を交換。さらに、製品名が刻印された部分に発生していたサビも除去しました。この対応を1週間で計7型実施しています。
事例②: 音楽用スピーカー用金型の腐食修理
コンサート等で使用される音楽用スピーカーの射出成形金型(他社製、材質:S55C)で、キャビ側のシボ面に腐食(サビ)が広範囲に生じていた事例です。弊社にてミガキ加工により腐食部分を除去したうえで、提携するシボメーカーにて再シボ加工を実施し、意匠面を復元しました。
7. 錆・腐食トラブルの解決なら、プラスチック金型メンテセンター.COMにお任せください
新潟の本社工場(金属加工の町”燕三条”エリア)を拠点に、全国の量産現場の緊急トラブルまで幅広く対応している弊社は、錆や腐食で老朽化した金型を蘇らせる体制を整えています。
三愛テクノロジーの3つの強み
- 【一貫対応】設計製作から分解修理・オーバーホールまで自社完結
新規金型の設計・製作(年間100型以上、累計5,000型超の実績)はもちろん、他社製・海外製・メーカー廃業で「図面がない金型」でも、接触・非接触の3次元測定器による3Dスキャン(リバースエンジニアリング)を用いて、錆た入れ子や部品を正確に復元・新調交換します。簡単なキズ補修であれば、最短即日での見積もり・施工にも対応しています。 - 【提案力】「直す」だけでなく「錆ることのない金型」にする構造改良提案
目の前の錆を落とすだけでなく、樹脂特性や工場環境を分析し、「なぜここにガス腐食や結露が集中するのか」を究明します。ガス逃げ溝(ベント)の追加加工や、古い金型の「割れやすい底淵部分への増肉提案」など、再発を防ぐ「改良保全・構造変更」を提案できることが大きな強みです。 - 【品質保証】最大850t成形機によるテストショットと徹底検証
修理・メンテナンスを行った金型は、自社内の最大850t成形機でテストショット(試作・トライ)を実施します。量産時の圧力・温度環境を再現し、トライ品の寸法管理と外観検査をクリアした上で、修理報告書を添えてお客様へ納品します。
まずは技術相談からお気軽にどうぞ
「錆を磨きすぎて寸法が狂ってしまった」「メーカーが廃業して対応してもらえない老朽化金型を根こそぎリフレッシュしてほしい」——そんな段階でのご相談を歓迎しています。経験豊富な技術者が直接お話を伺い、納期・ご予算に応じた最適な錆修理・メンテナンスプランをご提示いたします。
弊社はプラスチック金型を主軸としながらも、燕三条の強固なものづくりネットワークを活かし、ゴム金型・ブロー金型・ダイカスト金型・プレス金型など、あらゆる金型の修理・メンテナンスにも対応しています。お気軽にお問い合わせフォームまたはお電話にてご連絡ください。
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