プラスチック射出成形金型の樹脂漏れとは?原因の見分け方と修理の流れを解説
射出成形の生産現場でしばしば起こるトラブルのひとつに「樹脂漏れ」があります。少量であれば見た目には気づきにくく、放置されたまま生産が続いてしまうことも少なくありません。しかし放置すると金型そのものを損傷させ、最悪の場合は生産ラインの停止につながります。本記事では、樹脂漏れがどのような現象か、主な原因、気づくためのサイン、修理の流れまでを解説します。

樹脂漏れとは?
樹脂漏れとは、射出成形の際に金型の内部を流れているはずの溶けたプラスチック(樹脂)が、本来通るべきルート(ランナーやゲートなど樹脂の通り道)を外れて、金型のわずかな隙間からにじみ出してしまう現象です。
射出成形機は非常に高い圧力で樹脂を金型内に押し込みます。そのため、金型の部品同士の合わせ目にほんの少しの隙間や変形があるだけでも、そこから樹脂が漏れ出してしまいます。漏れた樹脂は金型内部の可動部やヒーターの配線に固着し、金型自体を傷める原因になります。

樹脂漏れの主な原因3つ
樹脂漏れの原因はさまざまですが、現場で特に多く見られるのは次の3つです。
ノズルタッチの変形
射出成形機のノズル(樹脂を射出する部分)と、金型側でそれを受け取るスプルーブシュ(円筒形状の金型部品)が接する箇所を「ノズルタッチ部」と呼びます。このノズルタッチ部の中心がずれたまま成形を繰り返すと、接触面が少しずつ変形し、その隙間から樹脂が漏れ出すことがあります。
ホットランナー部品の破損
ホットランナーとは、樹脂を溶けた状態のまま成形品の近くまで送り届けるためのシステムです。廃棄するランナー(樹脂の通り道の余分な部分)を出さずに済むため近年注目されていますが、常に高温にさらされる部品のため、使用を重ねるうちに内部の部品が破損し、そこから樹脂が漏れ出すことがあります。
金型の膨張・収縮による隙間
金型は成形時の熱でわずかに膨張し、冷えると収縮します。この温度変化による伸び縮みが繰り返されることで部品同士の間にわずかな隙間が生じ、そこから樹脂が漏れることがあります。
樹脂漏れに気づくためのサイン
樹脂漏れは金型の内部で起こるため、外から直接見えるとは限りません。次のようなサインが見られたら、樹脂漏れを疑ってみてください。
- 成形機の温度が設定通りに上がりにくい
- 電流・電圧の値がいつもと違う(漏電や配線の断線が疑われる)
- 成形中に金型から煙が上がる、または焦げたようなにおいがする
- 成形品のウェルドライン(樹脂同士が合流してできる線)の位置がいつもと変わっている
特にウェルドラインの位置の変化は見落とされがちですが、複数箇所から樹脂を注入するタイプの金型では、どこか1箇所で樹脂漏れが起きるとその分だけ樹脂の流れる量のバランスが崩れるため、重要なサインのひとつです。
樹脂漏れの修理の流れ
樹脂漏れの修理は、原因が特定できるまでは共通の対応から始まり、そのあと原因に応じて枝分かれします。

①漏れた樹脂の除去・清掃
まずは漏れて固まった樹脂を取り除き、金型内部を清掃します。この段階で原因箇所を目視で確認できることもあり、修理の第一歩であると同時に、原因を特定するための重要な工程でもあります。ホットランナー周辺に樹脂が固着している場合、無理に剥がそうとするとヒーターやセンサーの配線を断線させてしまう危険があるため、慎重な作業が必要です。
②原因に応じた対応(部品交換または溶接による形状復元)
除去・清掃によって原因箇所が特定できたら、原因に応じて対応方法が分かれます。
ホットランナー部品そのものが破損している場合は、部品を新しいものに交換します。一方、ノズルタッチ部の変形や、金型の膨張・収縮による隙間のように、金型本体の形状そのものがずれてしまっている場合は、部品交換だけでは直せないため、変形・破損した箇所を溶接して肉盛りし、再度加工して元の形状に戻す「形状復元」という対応が必要になります。

樹脂漏れの実際の修理事例
樹脂漏れは、原因によって修理の内容が大きく変わるトラブルです。ホットランナー部品自体の破損だけでなく、ロケートリングやスプルーブシュといった金型側の部品の変形が原因になっているケースも少なくありません。ここでは、実際にどのような原因でどのような修理が行われたのか、事例を3つご紹介します。
樹脂漏れの相談は金型全体を診られるメーカーへ
樹脂漏れはホットランナー側だけでなく、成形機に金型を取り付ける際のロケートリング(位置決め用の部品)の変形や、金型本体側のスプルーブシュの変形など、複数の箇所が影響し合って起きることも少なくありません。そのため、ホットランナー部分だけを部分的に修理しても、根本的な解決にならないケースもあります。
三愛テクノロジーでは、年間100型以上、累計5000型を超える金型の設計・製作実績をもとに、ホットランナーだけでなく金型全体の寸法を確認したうえで、必要な箇所の再加工まで一貫して対応しています。図面が残っていない他社製・海外製の金型についても相談可能です。
[画像3:三愛テクノロジーの設備・作業風景の写真/位置:本セクション末尾]
まとめ
樹脂漏れは外から気づきにくいトラブルですが、温度の上がりにくさや電流値の変化、煙やにおい、ウェルドラインの位置の変化といったサインに注意することで早期に発見できます。原因によって修理方法(部品交換か、溶接による形状復元か)が変わるため、まずは漏れた樹脂を除去して原因箇所を正確に特定することが修理の第一歩です。金型全体を診られるメーカーに相談することで、根本的な解決につながります。
