射出成形金型のガスヤニとは?原因・トラブル・除去方法を解説

「金型の表面に茶色い汚れが付着している」「清掃しても、しばらくすると同じ場所に汚れが溜まる」「ガスベントが詰まり、成形不良が発生している」——このような症状の原因として考えられるのが、射出成形時に発生するガスヤニです。
ガスヤニは、表面の汚れを拭き取るだけで解決できるものではありません。固着の程度や付着箇所によっては、パーツクリーナーや金型洗浄液による清掃に加え、金型の分解や磨き直しが必要になることもあります。
本記事では、プラスチック成形金型の修理・メンテナンスを行う弊社の経験をもとに、ガスヤニが発生する原因や放置による影響、除去方法、再発防止に向けた金型改造について解説します。
1. 射出成形金型に発生するガスヤニとは?
ガスヤニとは、加熱された樹脂から発生した揮発成分や熱分解物が、金型内部で冷やされて固化・堆積した付着物です。金型表面やガスベント周辺に、茶色や褐色の汚れとして現れます。
射出成形では、シリンダー内で加熱・溶融した樹脂を金型内へ流し込みます。この過程で樹脂や添加成分の一部が揮発したり、熱によって分解されたりすることでガスが発生します。
発生したガスが金型内部を移動する間に冷却されると、ガスに含まれる成分が金型表面で固まり、徐々に堆積していきます。
ガスヤニ発生の基本的な仕組み
加熱された樹脂から発生した揮発成分や熱分解物が、金型内で冷やされて固化・堆積すること——これがガスヤニの正体です。
樹脂を加熱・溶融する → 揮発成分や熱分解物が発生する → 金型内でガスが冷やされる → 固化して金型表面に堆積する
ガスヤニ・ガス焼け・ガス腐食の違い
ガスに関連する金型トラブルには、ガスヤニのほかに「ガス焼け」や「ガス腐食」があります。名称は似ていますが、それぞれ発生している現象は異なります。
ガスヤニ
発生している状態:樹脂から発生した成分が金型内で固化・堆積している 主な特徴:金型表面やガスベント周辺に茶色・褐色の付着物が見られる
ガス焼け
発生している状態:逃げ場を失った空気やガスが圧縮され、局所的に高温になっている 主な特徴:成形品の一部に黒く焦げたような変色が生じる
ガス腐食
発生している状態:樹脂から発生したガスによって金型の金属表面が腐食している 主な特徴:金型表面が削れたり荒れたりして成形品へ影響する
2. ガスヤニが金型内に堆積する原因
ガスヤニは、樹脂からガスが発生するだけで生じるものではありません。発生したガスが金型外へ十分に排出されず、同じ場所を繰り返し通過したり特定の箇所に滞留したりすることで、付着量が増えていきます。
加熱された樹脂から揮発成分や熱分解物が発生する
樹脂を加熱・溶融する過程では、樹脂や添加成分などから揮発成分が発生します。加熱状態やシリンダー内での樹脂の滞留状況によっては、樹脂の一部が熱分解してガスの発生量が増えることもあります。
発生するガスの量や性質は、使用する材料や成形条件によって異なります。そのため、材料や条件の変更をきっかけに、以前よりガスヤニの付着が目立つようになることもあります。
金型内部で冷やされて固化する
溶融樹脂の周辺で発生したガスは高温ですが、金型内を移動する過程で冷却されます。ガスに含まれる成分が冷やされると、金型表面にヤニ状の付着物として残ります。
一度に大量のガスヤニが発生するとは限りません。量産を繰り返す中で薄い付着物が何層にも重なり、次第に頑固な固着物へと変化していきます。
ガスが通過・滞留する箇所に付着が集中する
ガスヤニは、ガスが繰り返し通過する場所や、金型外へ抜けにくい場所に付着しやすくなります。特にガスベント、キャビティやコアの表面、パーティングライン、入れ子の合わせ面、最終充填部などは注意が必要です。
製品面だけを清掃しても、金型内部やガスの排出経路に付着物が残っていると、短期間で再発することがあります。
3. ガスヤニを放置すると生じるトラブル
ガスヤニは単なる金型の汚れではありません。堆積が進むと、ガスの排出機能や成形品の品質に影響します。
ガスベントが詰まり、ガスを排出できなくなる
ガスベントは、射出時に金型内の空気やガスを外部へ逃がすための細い通路です。ここにガスヤニが堆積すると通路が狭まり、本来のガス抜き機能を発揮できなくなります。
ガスの排出経路が塞がれると、金型内に空気やガスが残り、ショートショットやガス焼けなどの成形不良につながります。
成形品の外観品質へ影響する
キャビティやコアの製品面にガスヤニが付着すると、金型表面の状態が変化し、その跡が成形品へ転写されることがあります。
特に外観品質が重視される製品では、わずかな付着物でも問題になります。同じ場所で変色や外観不良が繰り返し発生している場合は、金型表面やガス排出経路の確認が必要です。
固着すると除去作業が大がかりになる
付着してから時間が経ったガスヤニは、金型表面へ強く固着します。軽度であれば洗浄液で除去できても、固着が進むと金型の分解や磨き直しが必要になります。
ガスヤニは、付着量が少ない段階で除去することが重要です。量産終了後の清掃を後回しにすると、次回使用時には簡単な拭き取りだけでは除去できなくなっていることがあります。
金型表面の腐食や劣化につながることがある
ガスヤニが長期間付着した状態が続くと、保管環境などの条件も重なって金型表面のサビや腐食につながることがあります。
ガスヤニを除去する際は、付着物を取り除くだけでなく、その下に表面荒れや腐食が生じていないかも確認することが重要です。
4. ガスヤニを除去する修理・メンテナンス方法
ガスヤニの除去方法は、付着の程度や場所、金型表面の状態によって異なります。主にパーツクリーナーや金型洗浄液による清掃と、固着が進んでいる場合の磨き直しを行います。
ガスヤニの主な修理内容
パーツクリーナーや洗浄液を使用した清掃を行い、洗浄だけでは取れない場合は金型表面を磨き直します。
パーツクリーナーや金型洗浄液で清掃する
軽度のガスヤニであれば、パーツクリーナーやガスヤニ除去用の金型洗浄液で清掃します。
ただし、洗浄剤であれば何でもよいわけではありません。金型材質や表面処理、成形する製品の用途、ガスヤニの付着状態を確認したうえで、適切な洗浄剤を選ぶ必要があります。
キャビティやコアなどの製品面は、傷が付くと成形品へ転写されることがあります。強く削り取るのではなく、表面状態を確認しながら慎重に除去します。
必要に応じて金型を分解・オーバーホールする
ガスヤニが入れ子の合わせ面や金型内部へ入り込んでいる場合は、外側からの清掃だけでは十分に除去できません。このような場合は金型を分解し、部品ごとに付着箇所を確認します。
オーバーホールでは、金型内部のガスヤニや汚れを確認したうえで、必要に応じてアセトンを用いた洗浄などを行います。金型表面だけでなく、ガスが通過する内部経路まで清掃することで、本来の機能を回復させます。
>>関連記事:オーバーホール項目について
洗浄で除去できない場合は磨き直す
ガスヤニが金型表面へ強く固着し、パーツクリーナーや洗浄液だけでは除去できない場合は、金型表面を磨き直します。
磨き直しでは、ガスヤニを取り除きながら金型表面の状態を整えます。ただし、必要以上に磨くと製品寸法や表面状態に影響するため、金型形状や固着の程度を見ながら作業範囲を判断します。
三愛テクノロジーでは、医療用ごみ箱向け射出成形金型のバリ修理を行った際に、金型へ付着していたガス汚れを確認し、磨きによって除去した実績があります。
>>関連記事:医療用ごみ箱向け射出形成金型のバリ修理&ガス付着除去はこちら
除去後にガスの排出経路を確認する
ガスヤニを取り除いた後は、ガスベントやガス溝に詰まりが残っていないかを確認します。
製品面をきれいにしても、ガスの排出経路が塞がれたままでは、再びガスヤニが付着したりガス焼けが発生したりすることがあります。
5. ガスヤニの状態に応じた修理方法の選び方
ガスヤニの修理では、最初から大がかりな加工を行うのではなく、付着状態や金型構造を確認したうえで、清掃・分解・磨き直し・改造の順に必要な対応を検討します。
表面に軽く付着している
金型表面に軽く付着している程度であれば、パーツクリーナーや金型洗浄液による清掃を検討します。洗浄した後は、付着物が残っていないかをきちんと確認することがポイントです。
入れ子や合わせ面の内部に溜まっている
入れ子や合わせ面の内部にガスヤニが溜まっている場合は、金型の分解・オーバーホールを検討します。表面からは見えない箇所にガスヤニが残っていないかを確認する必要があります。
金型表面に強く固着している
金型表面に強く固着している場合は、製品面やガス付着部の磨き直しを検討します。磨き直しを行う際は、製品寸法や金型表面の状態に影響を与えない範囲で加工することが重要です。
短期間で繰り返し発生する
短期間で繰り返しガスヤニが発生する場合は、ガスベントの詰まりや金型構造の点検、PL面へのガス溝追加工などの改造を検討します。ガスが滞留する根本原因や、排出経路の不足が残っていないかを確認することがポイントです。
実際の修理方法は、金型材質・表面処理・製品形状・ガスヤニの付着箇所・固着の程度などによって異なります。金型の状態を確認せずに磨きや追加工を行うと、製品寸法やバリの発生に影響することがあります。
>>製作事例:「ガスヤニ除去・ガス逃げ対策」の金型事例一覧

6. ガスヤニの再発を防ぐための対策
ガスヤニは、固着してから除去するよりも、付着量が少ない段階で清掃する方が、金型への負担やメンテナンス時間を抑えやすくなります。
量産終了後にガス汚れを除去する
量産終了後は、モールドクリーナーやガスヤニ用の洗浄剤を使用し、金型表面に付着した汚れを取り除きます。
清掃を行わずに保管すると付着物が固着し、次回使用時には簡単に除去できなくなることがあります。金型を使用した後はガスヤニの付着状況を確認する習慣が重要です。
製品面だけでなくガスの通り道を点検する
ガスヤニは製品面だけでなく、ガスが通過する経路全体に付着します。清掃の際は、以下の4箇所を重点的に点検してください。
PL面
金型を締めた際に接触する合わせ面です。ガスヤニや樹脂の残りが付着していると、そこからガスが漏れたり詰まったりする原因になるため、傷や異物の有無とあわせて確認します。
キャビティ・コア
成形品の外観に直接触れる製品面です。わずかな汚れや付着物でも成形品の外観品質へ影響するため、目視でしっかり確認します。
ガスベント・ガス溝
ガスを金型外へ逃がすための細い通路です。ここにガスヤニが詰まると排出機能そのものが失われるため、通路が塞がれていないかを重点的に確認します。
入れ子・スライド周辺
合わせ面や奥まった構造のため、清掃時に見落としやすい箇所です。ガスヤニが残ったままだと動作不良の原因にもなるため、忘れずに確認します。
繰り返し発生する場合は金型改造も検討する
洗浄や磨き直しを行っても短期間でガスヤニが再発する場合は、ガスの排出経路が不足している可能性があります。
このような場合は、ガスベントの修正だけでなく、PL面へのガス溝追加工など、金型構造そのものを見直す改造が有効です。表面の汚れを取り除くだけでなく、ガスが滞留しにくい状態へ改善することで、トラブルの再発防止につながります。
>>金型事例:金型 修理・改造一覧
7. ガスヤニ除去・金型メンテナンスは当社にお任せください
プラスチック金型メンテセンター.COMを運営する三愛テクノロジーでは、ガスヤニの清掃だけでなく、金型の分解・オーバーホール、磨き直し、再発防止のための改造提案まで一貫して対応しています。
SERVICE 01 状態に合わせたガスヤニの清掃・除去
金型材質や表面処理、製品用途、ガスヤニの固着状態を確認し、専用クリーナーによる洗浄や磨き直しなど、金型の状態に適した方法で除去します。
SERVICE 02 分解・オーバーホールによる内部メンテナンス
入れ子の合わせ面や金型内部へガスヤニが入り込んでいる場合は、金型を分解し、表面から確認できない箇所まで点検・洗浄します。
SERVICE 03 ガス溝追加工を含む再発防止の改造提案
ガスヤニを取り除くだけでなく、ガスベントの詰まりやガスの排出経路、金型構造を確認します。必要に応じてPL面へのガス溝追加工など、再発を防ぐための改造をご提案します。
累計5,000型を超える設計・製作実績で培った、根本解決のための知見
三愛テクノロジーは、金型の設計・製作から修理・メンテナンスまで一貫して対応する金型メーカーです。長年の設計・製作で培った知見を活かし、表面の汚れを取り除くだけでなく、量産時の安定性やガスの排出状態まで見据えて対応方法を検討します。
自社製金型に限らず、他社製・海外製・図面のない金型の修理やメンテナンスにも対応しています。
8. まとめ
ガスヤニは、加熱された樹脂から発生した揮発成分や熱分解物が、金型内で冷やされて固化・堆積した付着物です。単なる表面汚れとして扱うのではなく、付着状態とガスの排出経路を合わせて確認することが重要です。
POINT 01 軽度のガスヤニは洗浄によって除去できる
付着してから時間が経っていないガスヤニは、パーツクリーナーや金型洗浄液による清掃で除去できることがあります。
POINT 02 固着している場合は分解や磨き直しが必要
洗浄だけでは除去できない場合や、入れ子の合わせ面や金型内部へ入り込んでいる場合は、金型の分解・オーバーホールや磨き直しを検討します。
POINT 03 ガス溝追加工などの改造が再発防止につながる
ガスヤニによってガスベントが塞がれると、ショートショットやガス焼けなどの成形不良につながります。繰り返し発生する場合は、ガスの排出経路を確認し、PL面へのガス溝追加工などの改造を検討することが重要です。
「洗浄してもすぐにガスヤニが再発する」「固着して自社では除去できない」「他社製や図面のない金型をメンテナンスしてほしい」といった場合は、プラスチック金型メンテセンター.COMまでお気軽にご相談ください。
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