金型のガストラブルとは?種類と原因、対策をまとめて解説
「ガス焼け」「ガスヤニ」「ガス抜き」「ガスベント」——射出成形金型のトラブル相談では、こうした「ガス」にまつわる言葉が数多く登場します。しかし、これらは似ているようで指しているものがそれぞれ異なり、混同されたまま相談が寄せられることも少なくありません。「ガスの対策をしたはずなのに、別のガストラブルが起きた」というケースの多くは、この混同が原因になっています。本記事では、金型のガストラブルを整理し、それぞれの原因と対策、詳しい解説記事への入り口をまとめてご紹介します。

この記事でわかること

金型のガストラブルは大きく3つに分けられる
金型の「ガス」に関する話題は、性質の異なる3つのグループに分けて考えると整理しやすくなります。ポイントは、①②が「あらかじめ備えておくべき設計・工法」の話であるのに対し、③は「対策が不十分だった結果、実際に現れる不良症状」の話である、という階層の違いです。
①ガスベント(金型の構造・設計)
ガスベントとは、金型内に発生したガスを外部へ逃がすための、金型自体に設けられた微細な通路のことです。一般的には、PL面(金型を締めた際に接触する合わせ面)に、0.02mm前後というごく浅い溝を切ることで設けられます。
この深さの設定が非常に重要です。浅すぎるとガスが十分に逃げず、後述するガス焼けやガスヤニの原因になります。逆に深すぎると、今度はそのベントから樹脂そのものが漏れ出し、バリの原因になってしまいます。ガスベントは、射出成形金型には基本的に設計段階から組み込んでおくべき要素であり、後から追加工することも可能ですが、位置や深さの見極めには専門的な知見が必要です。
②ガス抜き(工法・加工)
ガス抜きとは、ガスベントを含め、金型内に溜まったガスを実際に外部へ逃がすための工法や加工全般を指す、より広い概念です。単純な溝であるガスベントだけでは逃がしきれない複雑な形状の製品では、ガス抜き専用のピン(ガス抜きピン)を設置したり、金型内を強制的に減圧する真空引きの装置を用いたりと、より積極的な対策が取られることがあります。
製品の形状や樹脂の流動特性によって最適なガス抜きの方法は異なるため、成形不良が繰り返し起きる場合は、金型の構造そのものを見直す加工が必要になるケースもあります。
③ガス焼け・ガスヤニ・ガス腐食(不良症状としてのトラブル)
ガスベントやガス抜きの対策が不十分な場合、実際に金型や成形品に現れる不良症状が、ガス焼け・ガスヤニ・ガス腐食の3つです。名称が似ているため混同されがちですが、発生するメカニズムも現れ方もそれぞれ異なります。
ガス焼けは、逃げ場を失ったガスや空気が金型内で圧縮されることで高温になり、成形品の一部が黒く焦げたように変色する現象です。圧縮によって一瞬で樹脂の燃焼温度近くまで達してしまうため、他の2つに比べて発生・進行が速いのが特徴です。
ガスヤニは、加熱された樹脂から発生した揮発成分や熱分解物が、金型内部で冷やされて固まり、茶色や褐色の付着物として金型表面に少しずつ堆積していく現象です。ガス焼けと違い、量産を繰り返す中で徐々に蓄積していく、進行が緩やかなタイプのトラブルです。
ガス腐食は、樹脂から発生したガスの成分が金型の金属表面と反応し、表面が削れたり荒れたりする現象です。目に見える汚れとしてではなく、金属そのものの劣化として現れるため、発見が遅れやすい点が特徴です。特に製品面にシボ加工が施されている場合、細かい凹凸の中に腐食が入り込み、目視では気づきにくいまま進行することがあります。
症状から原因を見分けるポイント
「何が起きているか分からないが、とにかく成形品や金型に異変がある」という場合は、まず現れている症状から当たりをつけると、どの対策が必要か整理しやすくなります。
- 成形品の一部が黒く焦げたように変色している → ガス焼けの可能性。射出速度が速すぎる場合にも起こりやすいため、成形条件とあわせて確認する
- 金型表面に茶色い汚れが付着している、清掃してもすぐ同じ場所に戻る → ガスヤニの可能性。付着箇所(ガスベント周辺か、キャビティ・コア面か)によって除去方法が変わる
- 金型表面が削れたり荒れたりしている、シボ面がざらついてきた → ガス腐食の可能性。目視で分かりにくいため、定期的な点検が重要
- 上記のいずれにも当てはまらないが、ショートショットや成形不良が繰り返し起きている → ガスベント・ガス抜きの設計そのものが不足している可能性
症状が複合的に現れている場合や、原因の切り分けが難しい場合は、金型全体を確認できるメーカーに相談するのが確実です。

ガストラブルの実際の解決事例
ガスベント・ガス抜きの設計から、ガスヤニやガス付着への対応まで、三愛テクノロジーが実際に手がけた事例を3つご紹介します。
金型のガストラブルは金型全体を見られるメーカーへ
三愛テクノロジーでは、ガスヤニの清掃や磨き直しといった表面的な対応だけでなく、ガスベントの設計や金型構造そのものまで確認したうえで、根本的な対策をご提案しています。年間100型以上、累計5000型を超える金型の設計・製作実績をもとに、どのガストラブルにも一貫して対応可能です。図面が残っていない他社製・海外製の金型についても相談可能です。

まとめ
金型のガストラブルは、ガスベント・ガス抜き(あらかじめ備えておくべき構造や工法の話)と、ガス焼け・ガスヤニ・ガス腐食(対策が不十分だった結果として実際に現れる不良症状)という、2つの階層に分けて考えると整理しやすくなります。まず現れている症状から原因の見当をつけ、必要に応じて金型全体を見られるメーカーに相談することが、根本的な解決への近道です。