射出成形金型の水漏れの原因とは?検査・修理から未然に防ぐ対策まで金型のプロが解説
プラスチック射出成形の現場において、金型の「水漏れ」は生産性や製品品質を著しく低下させる致命的なトラブルの一つです。水漏れを放置すると、成形不良の多発だけでなく、高価な金型そのものの寿命を縮める原因にもなります。
本記事では、金型の水漏れがもたらすリスク、発生原因、具体的な確認・検査方法、そして金型メーカーへの確認に基づいたリアルな修理・補修アプローチまで詳しく解説します。
金型の水漏れとは?
射出成形における金型の水漏れとは、金型を冷却・温調するために通されている回路や、それに接続されたホース、カプラー、内蔵されたOリングなどの隙間から冷却水(温調水)が漏れ出てしまうトラブルを指します。
射出成形において金型の冷却は非常に重要な要素であり、金型内に効率よく水を循環させることで成形品を固めています。水を流す回路や接続部に不具合が生じると水漏れが発生し、わずかな漏水であっても、放置すれば成形品の品質低下や金型のサビやかじり等が発生します。そのため、成形現場では稼働前後の早期発見と適切な対策が極めて重要視されています。
水漏れが金型に与える4つの影響
金型から冷却水が漏れると、成形現場や製品に以下のような重大な悪影響を及ぼします 。
➊成形品の品質悪化(模様や水痕の発生)
漏れた冷却水が入れ子面に流出すると、成形品の表面に筋や水滴のような模様、水痕が付着し、不良品の原因になります 。
>>金型の入れ子とは
❷金型の錆・腐食の発生
金型に水がかかった状態が続くと急速にサビが進行し、金型の精度低下や、スライド・エジェクターなどの動作不良を招きます 。
❸ホットランナーの漏電と成形停止
ホットランナーシステムを搭載している場合、漏れた水がヒーターや配線部に掛かることで漏電が発生し、量産ラインがする恐れがあります。
❹作業環境の悪化
冷却水が漏れてしまい、床面が水浸しになると作業安全性が損なわれます 。また、温調管理によって高温になった温水が漏れた場合、作業者が触れると火傷を負う危険性があります。
金型の水漏れ確認・検査方法
量産稼働前やトラブル発生時には、迅速かつ正確に水漏れ箇所を特定する必要があります 。
- 水を用いた目視確認:
冷却回路に実際に水を通し、金型から水が垂れていないか、ホースやカプラーの接続部から漏れていないかを目視でチェックします。漏れ箇所を特定する際は、一度水を止めて確認します。確実性を求めている場合は、水を用いた目視確認を行います。 - エアーを用いた簡易検査:
冷却回路にエアーを送り込んで回路内の圧力を高めます。空気圧メーター等を用いて圧力をチェックし、圧力が低下しなければ問題ありませんが、低下した(圧漏れがある)場合は、その回路のどこかで水漏れが発生していると簡易的に診断できます。
金型の水漏れが発生する4つの要因
水漏れの原因は主に以下の4つに分類されます。
1. Oリングの劣化
金型の分解作業や長期の型締め・成形を繰り返すうちに、サンドイッチ状態で使用されるゴム製のOリングが徐々に潰れたり、切れることでシールの効果を失います。分解回数が多い金型ほどOリングの劣化が早くなります。
2. 錆の浸食
水管の内部にサビが発生すると、錆びの浸食がすすみ、目図まりが起こり、水管と壁のクリアランスが少ないと、穴が空いてしまう恐れがある。
Oリングが当たっている金属面に錆が発生し、密着性が悪くなる。
3. クラックの発生
箇所を視点にしているため、クラックが入りやすいため、割れが発生する。
なるべく角は避けて、角付近に水管は通さないように工夫することが重要です。
当社では、クリアランスを15mmでご提案することが多いです。
4. 水口の破損・カプラーの変形
金型の移動や反転、組み立てを行う際に、ワイヤーやチェーン、ラウンドスリングなどが水口周辺のホースや冷却水用継手(カプラー)に引っかかり、物理的に変形・破損してしまうケースです 。
金型の水漏れの修理方法
水漏れが確認された場合、その原因や程度に応じて金型メーカーでは以下のような修理を行います。
部品の交換・シリコンシーリング
Oリングからの水漏れや、水口(継手・カプラー)の破損・変形が原因である場合は、該当の消耗部品を新品に交換します 。 特にOリングは安価なため、金型をオーバーホール(分解点検)した際には毎回交換することが推奨されます 。その際、金型メーカーのプロの技として、Oリング部にシリコンを塗布(シリコンシーリング)して2重の防水対策を施すことで、シールの持続性と信頼性を格段に向上させます 。
クラックのレーザー溶接修理・入れ子の新規製作
金型の一部や金属壁にクラックが見つかった場合は、顕微鏡などで精密に調査した上で、リューター加工等で溝を掘り、YAGレーザー溶接機などを用いて肉盛り補修を行います 。溶接後に熟練の技術者が手仕上げで形状を新品同様に復元します。クラックが深刻な場合は、部分的な入れ子の交換や、新規に入子を製作して対応します。
冷却回路の変更
金型内部のクラックが非常に深い位置にあり、溶接修理が物理的に不可能な場合や、修理コストが合わない場合、金型メーカーでは既存の冷却回路を変更、あるいは該当の回路をプラグ等で閉塞する改造を行います。 残された他の冷却回路のレイアウトを変更し、成形サイクルや製品の冷却均一性を極力維持できるよう、金型の再設計・追加工を施します 。

水漏れを未然に防ぐための予防対策
生産ラインを予期せず止めないためには、事後保全だけでなく、日頃からの予防保全が極めて重要です 。
- 立ち上げ前の外観点検(日常チェック):
ノズルタッチ面に潰れや亀裂がないか 、PL面や金型周囲に水滴・サビがないか 、ホースが硬化して柔軟性を失っていないか を目視・触診で確認してください。 - 丁寧な「水抜き」の徹底:
成形終了時や金型保管時は、1回路ずつエアーを送り込んで内部の水を完全に飛ばす「水抜き」を徹底してください 。水が残留すると水管内にサビや目詰まりが発生し、次回稼働時の冷却不良を招きます 。水抜き後に油(防錆油など)を循環させる回路内防錆も有効です 。 - 金型取り扱い時の物理的破損防止:
ワイヤーやラウンドスリング、チェーンをモールドベースに取り付ける際は、水口(継手・カプラー)やホースに引っかからないよう細心の注意を払ってハンドリングしてください 。
金型の水漏れ修理事例
レールカバー用金型の水漏れ修理

こちらは、レールカバー用の射出成形金型です。お客様からは、傾斜ブロックのシャフト部から水漏れが発生しているため、修理してほしいという依頼をいただきました。そこで、顕微鏡で調査をしたところ、金型の一部に…..
>>事例の詳細はこちら
工具箱用金型のクラック&水漏れによる新規スライドコア製作

こちらは、工具箱の射出成型金型における、スライドコアにクラックは入り水漏れが発生したためにスライドコアを新規製作した修理事例です。こちらの金型は、当社が2006年に製作をした金型です。長年に渡り、こちらの金型を用いて生産をしていただいている中で、スライドコアにクラックが入り、水漏れが発生してしまったとのことでした。
金型の水漏れ修理は三愛テクノロジーへお任せください!
❶ 3Dスキャンを活用した図面レス金型の「リバースエンジニアリング・回路再設計」
図面がない古い金型や、海外製の移管金型であっても問題ありません 。当社では、高精度な接触・非接触の3次元測定器を用いて、現物の金型や部品を3Dスキャンし、CADデータとして復元するリバースエンジニアリング技術を有しています 。このデータをもとに内部の微細なクラックや温調回路の位置を正確に特定・解析し、図面のない状態からでも確実な水漏れ修理や冷却回路の変更・廃止といった高度な金型改造が可能です 。
❷ レーザー溶接機などを駆使した「高精度な肉盛補修・シリコンシーリング」
水漏れの原因となるOリングの劣化、サビの浸食、内部クラック、水口の破損などのトラブルに対して、微細な補修から根本的な解決まで対応します 。自社内にYAGレーザー溶接機(YW-150)や超高精度肉盛TIG溶接機などの設備を完備しており、金型への熱影響を最小限に抑えたクラック溶接補修や肉盛り、Oリング部のシリコンシーリングによる2重の防水対策が可能です 。また、金型を分解せずに水管内のサビや目詰まりを除去する洗浄(ウォーターリーマー使用)やオーバーホールにより、冷却効率を新品同様に復活させます 。
❸ 「迅速な水漏れ診断・見積り」と修理から修理後トライ、メンテナンスまで一貫対応
生産ラインをどうしても止められない緊急時には、空気圧を用いた簡易水漏れ検査等で迅速に漏れ箇所を特定診断し、技術相談・お見積りなども即日対応が可能です 。修理した金型が本当に直っているか、お客様の不安を払拭するため、納品前には当社の国内自社工場にて徹底した通水確認およびテストショット(試作トライ:最大850tまで対応)と最終調整を実施します 。これにより、お客様の現場での立ち上げをスムーズにし、水漏れによる成形不良や手戻りを徹底的に防ぎます 。
金型の水漏れや冷却トラブルでお困りの際は、プラスチック金型メンテセンター.COMへお気軽にご相談ください 。
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